中央青山の業務停止対象、法定監査すべて・企業向け
金融庁は10日、中央青山監査法人に対して上場企業など「法定監査」先企業を対象に監査業務の停止を求める行政処分を出す。不正を見抜くための内部管理の体制がずさんだったとの判断で、期間は7月から2カ月とする方向。2000社を超える企業が監査契約の見直しを迫られるとみられるうえ、中央青山の経営にも大きな影響を与えそうだ。
法定監査には証券取引法によって義務付けられている有価証券報告書の監査と、会社法に基づいて企業が株主総会に提出する財務諸表などを監査する業務がある。会社法による監査の場合、監査法人が業務停止命令を受けると、監査契約をすみやかに解除しなければならないルールがある。今回の業務停止命令は証取法と会社法の両方に基づく法定監査が対象となる。
金融庁、中央青山の一部業務停止命令へ・カネボウ粉飾で
金融庁は8日、中央青山監査法人に対し、カネボウの粉飾決算などで所属会計士の不正を未然に防ぐ内部管理体制に重大な不備があったとして、週内にも監査業務の一部停止命令を出す方針を固めた。期間は1―2カ月となる見込みで、すでに監査を担当している一部企業への監査業務も停止の対象となる。多くの大企業の監査を担っている4大監査法人に業務停止を命じるのは初めて。金融庁は監査先企業への影響を最小限に抑えるために、処分の発動時期については配慮する見通しだ。
中央青山への処分は公認会計士の監査を公的な立場から審査する公認会計士・監査審査会に諮ったうえで正式決定する。同審査会は9日に開かれる予定。金融庁は所属会計士が2004年に表面化したカネボウの粉飾決算に加担した容疑で起訴されていることなどを重視し、異例の厳罰処分に踏み切ることにした。
中央青山の一部業務停止、法定監査を軸に調整・金融庁
木村建設の監査役税理士「一度も監査の依頼されず」
耐震強度偽装事件で、利益水増しの疑いが持たれている木村建設(熊本県八代市、破産手続き中)の監査役を務めた税理士が、警視庁などの合同捜査本部の調べに対し「就任以降、一度も監査役としての仕事を依頼されなかった」と話していたことが、22日分かった。同社の決算承認手続きが形骸化していたことを裏付けるとみて、同本部は建設業法違反容疑での幹部らの立件に向け詰めの捜査を急いでいる。
関係者によると、この税理士は、30年以上前から木村建設の税務処理を担当。同社が自己破産の手続きを始めた昨年12月まで5年以上、監査役を務めていた。木村建設には、この税理士を含め監査役が2人いたが、もう1人の監査役が辞任した2003年3月以降はこの税理士が1人で務めていた。
捜査本部の事情聴取に対し、税理士は「木村建設から一度も監査を依頼されたことはない。監査役としての報酬もなかった」と説明したという。
監査法人に刑事罰・監視委、金融庁に法改正要請
証券取引等監視委員会は21日、企業の粉飾決算に関与した監査法人を刑事罰に問えるよう、証券取引法などの改正を金融庁に要請したと発表した。今のルールは刑事罰の対象を会計士個人に限っており、所属する監査法人の責任があいまいになりかねないと判断した。金融庁は今回の要請も踏まえ、監査制度の見直しについて金融審議会(首相の諮問機関)に検討を求める考えだ。
監視委の要請は法律に基づくものだ。同委はこれまでにカネボウやライブドアの粉飾にかかわった会計士を証取法違反で刑事告発しているが、監査法人に対しては法律に規定が無く告発できなかった。ただ、監査法人にも所属会計士の監督責任があるとの声は委員会内に根強く、法改正を求めることにした。