中央青山の会計士、足利銀の融資先顧問に 粉飾を容認

http://www.asahi.com/national/update/1007/TKY200510060361.html

 中央青山監査法人公認会計士が00年、監査を担当していた足利銀行(本店・宇都宮市、03年に破綻(はたん))から、同行の融資先企業を紹介され、その顧問税理士に就任していたことが関係者の話で分かった。この会計士や中央青山はその後、同行がこの企業の不良債権額を実際より少なく評価して粉飾した足利銀の01年3月期決算に「適正」のお墨付きを与えた。政府による特別危機管理の下にある現在の足利銀は、中央青山に損害賠償を求めた訴状の中で「会計士は虚偽を認識していた」と指摘している。

 監査法人は、監査対象の企業から独立した立場でその決算をチェックする役割を担っており、日本公認会計士協会の倫理規則は「依頼人や関与先との関係で、独立性の保持に疑いをもたれるような関係や外観を呈しないよう留意しなければならない」と定めている。中央青山監査法人は顧問税理士就任の事実関係には触れず、「監査は独立性を保持して実施したと考えている」としている。

 この企業は日光市にある従業員35人の旅館。96年に建物をリニューアルし、設備投資などで足利銀からの借り入れは10億円程度になっていた。低価格競争で経営難に陥っていたといい、足利銀は当時、日本銀行の指摘を受け入れてこの旅館の債務者区分を「破綻懸念先」としていた。

 関係者によると、00年ごろ、足利銀側はこの旅館に、それまで務めていた顧問税理士の交代を求めるとともに、中央青山の幹部にあたる代表社員公認会計士を紹介した。この会計士は00年11月期決算から顧問税理士に就任。報酬を得て、この旅館の経理内容をチェックしたり、経営戦略を助言したりしたという。

 一方、足利銀はこの前後、みずからの決算でこの旅館の区分を「破綻懸念先」から、より安全度の高い「要注意先」に格上げし、その分、不良債権を少なく査定した。問題となった01年3月期決算では、「破綻懸念先」として4億1858万円の損失を計上すべきなのに、実際には1億2283万円しか計上しなかった――と現在の足利銀は指摘している。中央青山とこの会計士は足利銀の会計監査の際に、これを容認していた。

 この旅館の経営はその後も改善せず、足利銀は04年6月、同社向けの債権約9億5000万円を放棄し、損失を被った。

 預金保険法に従って足利銀に設置された内部調査委員会は、この会計士について「顧問税理士に就任し、この企業の財務内容を知っていたのだから、足利銀行の債務者区分が虚偽であることを認識していた」と指摘している。足利銀は先月16日、そのほかの過失もあわせて根拠として、中央青山を相手取り、約11億円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

 朝日新聞は9月中旬以降、この公認会計士に事務所を通すなどして数回コメントを求めたが、回答はなかった。