会計・監査制度のさらなる改革を (NIKKEI NET:社説・春秋 ニュース)

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 ライブドア証券取引法違反事件は粉飾決算容疑が濃厚となり、堀江貴文前社長らの再逮捕が迫っている。偽計取引や風説の流布で株価をつり上げ、自社株の売却収入を利益計上した錬金術全体に捜査のメスが入ることになる。

 問題の行為は、傘下の投資事業組合を通じた自社株取引などで、自社株の売却で得た収入を利益に計上してはならないという会計ルールを逸脱したなどの疑いが持たれている。

 この会計処理が違法かどうかは投資事業組合ライブドア支配下にあり、連結決算の対象かどうかによる。投資事業組合の連結基準は明確でなく、会計基準の見直しが始まったところだが、捜査当局は実質的支配下にあったと見ているようだ。

 厳密には判断の余地があっても、経営実態の怪しい企業が株高を演出して自己増殖した会計操作がまかり通れば、会計基準とともに会計監査の信頼を揺るがす問題だ。資本市場の取引は企業の経営内容の正しい開示が前提になる。経営者の責任は当然だが、監査人の会計士は不透明な取引を見落とせば能力を疑われ、経営指導などで関与していれば職業倫理に反し、違法の可能性もある。

 粉飾決算の発覚のたびに監査の厳正化が叫ばれ対策も講じられたが、十分な効果が上がっていない以上、抜本的な制度の見直しが必要になる。企業の内部統制をチェックする監査制度の導入に加え、会計士や監査法人の監査業務を公認会計士協会が点検し、それを金融庁に置かれた公認会計士・監査審査会が監視する体制が機能しているかどうかだ。

 米国の公開会社会計監督委員会にならい、審査会の機能を強化し、上場会社を強制加入させて運営費用を負担させ、上場会社を監査する監査法人を登録制にすべきだ。上場会社の監査人の資格を明確にして監査の質を高めるだけでなく、中堅監査法人を育成して四大監査法人の寡占状態の現状では難しい監査法人の交代を容易にする効果もある。そうすれば監査人は監査業務を降りる行動を通じて企業に強い態度で臨める。

 会計士が監査対象の企業や金融機関から独立して任務を全うできる環境の整備も大切だ。監査法人の重要顧客である金融機関の検査権限を持つ金融庁が会計士を監督する現在の体制も見直しの対象になる。証券取引等監視委員会をより独立性の高い組織に改組し、その下に会計・監査の行政権限を集約することが、資本市場健全化のもう一つの課題だ。