「決算が疑われる」…「中央青山」起訴で各社に動揺

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051004-00000501-yom-soci

 カネボウ粉飾決算事件で、中央青山監査法人公認会計士・佐藤邦昭被告(63)らが証券取引法違反有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴されたことを受け、同被告らが会計監査を担当してきた企業の間に動揺が広がっている。

 自社の決算の監査結果の信頼性までが、株主や取引先から疑われかねないためだ。今後、金融庁が同監査法人に営業停止などの処分を下せば、監査の依頼先を替えなければならないとあって、各社とも処分の行方に注目している。

 同監査法人によると、9月時点で佐藤被告ら逮捕された4人の会計士が監査を担当していた企業は計23社。各社とも、9月中間決算の取りまとめ時期に入っており、同監査法人は先月、4人の逮捕直後に、大慌てで各社の担当会計士を交代させた。今のところ、各社から「他の監査法人に替えたい」という申し出はないという。

 しかし、企業の間には、「中央青山には高額の監査報酬を払ったのに、株主や取引先から決算の信用性を疑われて困っている」(東京都内の企業幹部)と、不満の声がくすぶっている。

 佐藤被告が2003年度まで8年間、監査を担当していた損保最大手の「東京海上日動火災保険」は先月、同監査法人に対し、改めて「監査証明」を求めた。間もなく同監査法人の幹部が「監査が厳正に行われたことを確認した」との文書を1枚、持参したという。

 すでに過去の決算書には佐藤被告らによる「適正意見」が付けられており、“屋上屋”を重ねた形だが、同社は「適正な決算であることを再確認したかった」と話す。だが、文書に記された「厳正」の根拠について、同監査法人の幹部から説明はなかったという。

 徳見清一郎被告(58)が01年度から監査を担当していた機械商社「極東貿易」は過去の決算について、改めて社内監査に乗り出した。社内監査をチェックする外部監査の結果を、社内でチェックし直すという異例の事態だが、同社は「株主や取引先の信頼を得るために、念には念を入れたい」と話す。

 担当会計士の交代は、企業と監査法人だけで決めることができるが、監査法人そのものを替えるには、株主総会を開いて承認を得る必要がある。

 これまで、日本では、監査法人や会計士が途中で交代させられたケースはほとんどない上、企業側にも「経営の内実をよく知っている会計士に長く担当してもらいたい」という意識が強かった。このため、会計士が粉飾に加担するという今回の事件を受けても、「今まで通り、中央青山に監査を依頼したい」(倉庫・運輸業の「ケイヒン」)という企業は多い。

 しかし、金融庁が重い行政処分を出した場合、同監査法人が引き続き監査を担当することについて、株主が問題視する可能性もある。このため、多くの企業は、処分の行方を戦々恐々として見守っている状態で、「株主からの苦情が多ければ、別の監査法人に依頼することも考えなければならない」(照明器具販売大手「オーデリック」)との声も上がっている。